股関節の痛み
股関節の痛み
股関節は足の付根にある大きな関節です。太もも側の大腿骨頭(だいたいこっとう)が、骨盤側のお椀の形状をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込み、大腿骨と骨盤をつないでいます。寛骨臼と大腿骨頭の表面は軟骨に覆われ、その周りは関節包に包まれています。
変形性股関節症は、先天性の疾患や外傷によって股関節に過度な負担がかかり、軟骨の摩耗や骨に変形が起きる疾患です。多くは、先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)や先臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)などの発育性股関節形成不全が原因となりますが、加齢変化や体重増加によって発症するケースもあります。我が国のレントゲン診断による有病率は1.0〜4.3%で、男性は0〜2.0%、女性は2.0〜7.5%と女性に多い疾患です。好発年齢は平均40〜50歳です。
関節軟骨がすり減ることで炎症が起き、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。足の爪切りができない、靴下が履きづらい、正座や和式トイレが困難といった支障を来すこともあります。進行すると痛みが強くなり、持続痛や夜間痛(夜寝ていても痛む)が現れてADL(日常生活動作)障害も大きくなります。
関節の変形の進行度は、前期・初期・進行期・末期に分類されますが、股関節の可動域や痛みには個人差があります。変形が進んでいたとしてもすぐに手術が適応されるわけではなく、痛みの程度や生活面での不自由さを考慮しながら治療を選択します。痛みが少なく、日常生活にも不自由がない場合は、保存的治療を選択し、投薬や関節内注射、股関節周囲の筋肉を鍛える運動療法が中心となります。保存的治療で改善しない場合、骨を切って股関節を整える骨切り術や、股関節をインプラントに置き換える人工股関節置換術が検討されます。このような手術を検討する際は、専門医をご紹介させていただきます。
FAIは股関節運動時に大腿骨頭(だいたいこっとう)と寛骨臼(かんこつきゅう)が繰り返し接触・衝突し、力学的負荷が加わることにより関節軟骨あるいは関節唇(かんせつしん)に損傷をきたす疾患です。関節唇の損傷が悪化すると、股関節の軟骨が摩耗し、関節が変形する変形性股関節症に進行することが知られています。症状はしゃがみ込み、割り座、階段昇降などの動作で起こることが多いです。治療は投薬や関節内注射、運動療法が中心となります。
明らかな病態は不明ですが、反復する機械的な刺激が鼡径管内筋(そけいかんないきん)や恥骨(ちこつ)周囲の筋(内転筋、腸腰筋など)に加わり、構造が破綻することにより生じると考えられています。特にサッカー選手に多く、一度発症すると慢性的になりやすいといわれています。全スポーツ障害の2〜18%を占めており、サッカー、ラグビー、ホッケー、テニスなどで発症しやすいといわれており、20歳前後の男性に多いとされています。原因としては恥骨炎、恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)、腸腰筋炎(ちょうようきんえん)、スポーツヘルニア、滑液包炎(かつえきほうえん)などが考えられています。治療は、スポーツ休止による安静、消炎鎮痛薬投与、ステロイドの局所注射、運動療法を行います。
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