足の痛み
足の痛み
第2次成長期の筋肉の緊張が高くなり、筋節(きんせつ)の滑走が悪くなる時期に多く発生します。成長期の若い人やスポーツ選手では大腿二頭筋(だいたいにとうきん:太ももの後ろの筋肉)や腓腹筋(ひふくきん:ふくらはぎの筋肉)、大腿四頭筋(だいたいしとうきん:太ももの前の筋肉)などに多く発生し、陸上競技やサッカーでは大腿二頭筋の肉離れが、テニスのサーブ時には腓腹筋の肉離れが発生しやすいといわれています。中高年では腓腹筋の肉離れが多くみられます。受傷時は、けがした足に体重をかけないようにして安静にし、患部を冷却・挙上します。その後は症状に合わせて数週間ほど痛みを伴う動作は避けて安静にし、その後は復帰に向けてリハビリテーションを行います。予防には運動・スポーツ前後の十分なストレッチを含めたウォームアップやクールダウンを行うことが重要です。
アキレス腱は、足首の後面にある人体の中で最も太い腱で、下腿三頭筋(かたいさんとうきん:ふくらはぎの筋肉)とかかとの骨をつないでいます。アキレス腱断裂とは、その一部(部分断裂)またはすべて(完全断裂)が切れた状態のことです。30~40歳代が受傷の好発年齢ですが、10代から高齢者まで幅広い年齢で起こる可能性があります。スポーツ活動中に踏み込み、ダッシュ、ジャンプ、ターンといった動作で、下腿三頭筋が急激に収縮してアキレス腱に強力な牽引力がかかったり、着地動作などで急に筋肉が伸びたりしたときに断裂が起こります。階段を踏み外したときなど、スポーツ以外の日常動作でも起こることもあります。受傷時には、後ろから「蹴られた」「バットで殴られた」「ボールをぶつけられた」といった衝撃を感じることが多く、痛みはあまり感じないことが多いです。アキレス腱断裂の治療には、ギプスや装具を用いて治療する保存的治療と、断裂したアキレス腱を直接縫合する手術治療があります。
アキレス腱周囲炎は、アキレス腱に繰り返しかかる負荷によって炎症が起こり、痛みや腫れが生じる疾患です。スポーツによるオーバーユース(使い過ぎ)、不適切な運動方法や靴の不適合などが原因として挙げられます。また肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病、透析なども関連しているといわれています。局所の安静を保ち、アキレス腱への負荷を減らすために、ヒールの高い靴を履くことで疼痛が緩和されます。疼痛が強い場合には、ステロイドと局所麻酔薬の局所注射などが行われることがあります。再発予防にはリハビリテーションも有効です。
足関節捻挫は主にスポーツ活動中に生じ、足首の痛みと腫れがみられます。下記のGrade1〜3に分類されます。
Grade1:靱帯の過伸展状態で、腫れや痛みは軽度であり機能的障害や不安定性がないもの
Grade2:靱帯の部分断裂で、中等度の腫れと痛みがあり圧痛を伴うもの
Grade3:靱帯の完全断裂で、著明な腫れと痛みがあり機能的障害と構造的不安定性があるもの
放置すると慢性的に足関節が不安定になる可能性があるので、受傷したらなるべく早く整形外科を受診して適切な治療を受けてください。治療は1〜3週間足首の固定をして、その後約6週間のリハビリテーションを行います。
足にはアーチ構造があり、効率よく体重をささえています。また内側の舟状骨(しゅうじょうこつ)にはアーチを作る働きをする後脛骨筋(こうけいこつきん)の腱が付いています。年齢による腱の変性や体重の負荷によって、この腱が機能しなくなるとアーチは低下します。成人期の扁平足は女性に多く発生します。つま先立ちがしにくくなり、さらに進行すれば足が硬くなって歩行が難しくなることもあります。また、足の裏にタコができて痛みが出ることがあります。治療はアーチをサポートするための足底板を使用し、足の筋肉を鍛えるための運動療法を行います。
外反母趾とは、足の親指(母趾:ぼし)が隣の指(第2趾:人差し指)側にくの字に曲がり、母趾の関節が足の内側に突出した状態をいいます。靴との摩擦で突出した部分に腫れや強い痛みが生じるため、靴を履いた歩行に支障を来します。進行すると足裏の第2趾の付け根付近にタコができたり、母趾が第2趾や第3趾(中指)の下に潜り込んでしまったりすることもあります。女性に多くみられる疾患で、原因としてはハイヒールなどの先の細い靴やかかとの高い靴の影響が最も考えられます。また関節リウマチや扁平足が原因にもなります。治療には保存的治療と手術治療がありますが、多くの場合、保存的治療が選択されます。保存的治療では、足先が細く、ヒールの高い靴を避け、関節の突出部分がこすれない幅広の靴を選ぶといった靴の指導、親指を支えている母趾外転筋という筋肉を鍛える体操や関節を柔らかくするストレッチなどを行います。また、外反母趾を矯正するための装具や足のアーチ構造を守るための足底板などを用いることもあります。保存的治療を行っても痛みが取れない場合や、変形が改善せず歩行障害を生じている場合には手術治療が検討されます。
足底腱膜炎は、足の裏に繰り返し負荷かがかかることにより、足底腱膜とかかとの骨との付着部に細かい断裂や変性が起きることで痛みが生じる疾患です。長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、靴の不適合、スポーツ(ランニングやジャンプなど)による使いすぎが主な原因と考えられています。中年女性に多くみられ、朝、起床して最初の1歩目に痛みを感じます。歩くうちに徐々に軽減し、夕方になって歩行量が増えるに従い、再び痛みが強くなってきます。まずは足にあった靴を履くようにしますが、その際に足底板を使用することもあります。また、ストレッチなどの運動療法も行います。症状が強い場合には、消炎鎮痛薬を使用したり、ステロイドを局所に注射したりすることもあります。
痛風は、「患部に風が当たるだけで痛みが生じる」ことからこの病名が付けられたといわれています。足の親指の付け根に、突然、腫れと激痛が出現します。ほとんどは足の親指の付け根に起きますが、足首や膝、手、肩など、どこの関節にも起こる可能性があります。30~50代の男性に多くみられます。痛風は、血液中の尿酸(にょうさん)の濃度が高い状態が続くことにより、尿酸の結晶が関節で沈着して炎症を起こすことで発症します。血液中の尿酸が7mg/dLを超えると、痛風のリスクがある「高尿酸血症」の状態になります。痛風の発作で痛みや炎症が強い場合は、まず消炎鎮痛薬を使用します。痛みや炎症が落ち着いたら尿酸値を下げる薬を使用します。ただし、薬をやめるとすぐに尿酸値が高い状態に戻ってしまうことが一般的です。そのため自己判断で減薬したり中止したりせず、処方されたとおりの量をしっかりと飲み続けることが大切です。発作を起こしている場合は安静・患部のクーリングが必要です。また、運動や保温は症状を悪化させるので、無理に歩き回らず、入浴も控えましょう。
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