腰痛症
腰痛症
腰痛症とは、腰が痛くなる病態ですが、特定の病気を指すのではなく、腰痛を引き起こす様々な疾患の総称のことです。腰痛の多くは、腰椎(腰の背骨)に負担がかかり、障害が起きることで発症しますが、その他にもさまざまな要因が腰痛の発症に関係しています。
腰痛は、男性では1番目、女性でも肩こりに次いで2番目に訴えの多い症状です。
腰は、「腰椎」と呼ばれる5つの背骨がブロックのように積み上げられて構成されています。その背骨と背骨の間にはクッションの役目を果たしている「椎間板(ついかんばん)」があります。また背骨の後ろには上下を繋いでいる「関節」があり、そのまた後ろには「筋肉」が存在しています。また脊柱管と呼ばれる管の中を「神経」が通っています。また、腰椎の下の骨盤には「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」と呼ばれる関節があります。腰痛は障害される部位によって、「椎間板性腰痛」、「椎間関節性腰痛」、「筋・筋膜性腰痛」、「神経性腰痛」、「仙腸関節性腰痛」と分類されます。そのほかにさまざまな検査を行っても原因が特定しきれない腰痛があり、それを非特異的腰痛と呼びます。わが国の腰痛原因の調査(2016)では、椎間関節性22%、筋・筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%であり、非特異的腰痛は22%と報告されています。また非特異的腰痛を1年以上観察した報告では、「最初の3ヶ月で33%の患者さんが改善したが、1年後では65%の患者さんに残存していた」との報告があります。この結果から大部分の患者さんで自然回復するとは言えませんので、長期間にわたって治療が必要になることもあると考えられます。
また、腰痛症は「急性腰痛症」と「慢性腰痛症」に分類されます。腰痛が発症してから1ヶ月以内のものを「急性腰痛症」、3ヶ月以上続く腰痛症のことを「慢性腰痛症」といい、それぞれ治療が異なります。ちなみに「ぎっくり腰」とは急性腰痛症のことをいいます。
当クリニックでは腰痛の原因をできる限り明らかにして、それぞれの原因に合わせた治療を行います。治療内容は、筋膜リリースやブロック注射、消炎鎮痛剤の内服、装具療法、物理療法、運動療法などです。
要因や原因が多く存在する症状のため、まずはお気軽にご相談ください。
スポーツや加齢に伴う椎間板の変性・損傷により起こる腰の痛みです。
正常な椎間板にはほとんど神経が通っておらず、椎間板そのものが傷ついてもそれほど痛みは感じませんが、いったん椎間板の外側の線維輪(せんいりん)が損傷すると、その修復のために神経を伴った血管が線維輪の内側に入り込み痛みを感じるようになるといわれています。この腰痛では、どちらかといえば前屈動作で痛みが生じやすいです。治療は、装具療法や消炎鎮痛薬の内服、運動療法、椎間板ブロックなどを行います。
椎間関節への繰り返される負担や加齢などにより、腰椎の椎間関節に炎症が生じたり、動きが悪くなったりすることで起こる腰の痛みです。重症でなければ安静時には症状を訴えること少なく、腰を反らす・捻る動作で痛みが出現しやすいのが特徴です。治療は、装具療法や消炎鎮痛薬の内服、椎間関節ブロック、運動療法などを行います。
長時間のデスクワークといった同じ姿勢を取り続けることや前屈みでの家事、腰に強い負荷をかけるスポーツなど、過剰な負担をかけることで腰の後ろにある筋肉が硬くなります。その状態が続くと筋肉や筋膜が炎症を起こし、血行が悪くなることで腰の痛みにつながります。症状は、身体を動かした時の痛みと、腰を押した時に筋肉に沿って出る痛みです。治療は、筋膜リリースや消炎鎮痛薬の内服、運動療法などを行います。
背骨の骨と骨の間にはクッションの働きをする椎間板があります。椎間板の中心にある髄核(ずいかく)という組織が後方または側方へはみ出て神経を圧迫し、腰の痛みや神経痛を生じる病気です。
馬尾(ばび:神経根の束)や神経根(しんけいこん)が通る部分が狭くなり、神経が圧迫されて起こります。腰の痛み以外にも足の痛みや、長時間の歩行が困難となる間欠性跛行が生じます。
骨盤にある仙腸関節に中腰での作業、急な動作、同じ動作の繰り返しなどでの負荷がかかると、関節に炎症が起きて痛みが生じるといわれています。症状はでん部(おしり)の痛みが一般的ですが、時に足にかけても痛みが生じることもあります。治療は、安静や消炎鎮痛剤の内服、仙腸関節ブロック、運動療法、徒手療法などを行います。
腰痛は、圧迫骨折や癌、感染症などが原因となることもあるため、放っておかず専門医の診断を受けることが大切です。
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